【レポート】Fashion Biz Study 009 ファッションビジネスのものづくりに必要な法律講座

2016年2月20日(土)18時より講師に弁護士 馬場貞幸氏と弁護士 山本真祐子氏をお招きして「Fashion Biz Study 009 ファッションビジネスのものづくりに必要な法律講座」を開催しました。

講座の前半は馬場弁護士が登壇されて「製造物責任法」についてお話しいただきました。

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「製造物責任法」とは「製造物」の「欠陥」によって「生命、身体又は財産」に損害を被った場合に、被害者が「製造業者等」に対して損害賠償を求めることができる法律です。PL法(Product Liability)法とも呼ばれています。
事業として製造を行う場合はその事業規模に関わらず、個人であっても、当然に第三者に対して負う義務で、ファッションビジネスにたずわる方々も正しい知識を得ることが大切です。日本では1995年に施行された法律でファッション、アパレルの分野は判例はまだ多くないそうですが、具体例をあげていただきながら学んでいきました。

「製造物責任法」においては被害者は
1 製造物に欠陥が存在していたこと
2 損害が発生したこと
3 損害が製造物の欠陥により生じたことを
を主張・立証するだけでよく、製造業者等の過失を立証する必要がありません。

「製造業者等」には
1 製造業者
2 加工業者
3 輸入業者
が含まれ、リース業者やレンタル業者、販売業者などは原則として責任を負いません。リメイクは加工業者に該当するので責任が発生します。
OEMなどにより商品を生産する場合も、ブランドは「製造業者等」に当たる場合があります。

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Fabと製造物責任法の関わりについても触れてくださいました。
ユーザーがFabを利用して制作したものを販売しているか否か、有償か無償かに関わらず、製造、加工、輸入をユーザーが反復継続して行っていると「製造業者等」に該当するため責任が発生します。現行の法律ではお客様からのご依頼で制作したものに欠陥があり損害が発生した場合にもユーザーに責任が発生するリスクがあり負担が大きいのが実情で、法律の適用について検討の必要があると言えそうです。

休憩をはさんで後半は山本弁護士が登壇されました。

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アジェンダは下記のとおりです。
1 アゾ染料規制に関する法律
2 表示に関する法律
3 デザイン、ブランド名に関する法律

はじめに2016年4月1日より施行される、1 アゾ染料規制に関する法律 についてお話しをいただきました。アゾ染料の一部について肌に直接触れる商品については規制対象となります。

続いて、2 表示に関する法律として、家庭用品品質表示法に基づく、繊維の組成、表示者名・連絡先、洗濯表示についてお話しをいただきました。
家庭用品品質表示法は、一般消費者が製品の品質を正しく認識し、その購入に際し不測の損失を被ることのないように、事業者に家庭用品の品質に関する表示を適正に行うよう要請し、一般消費者の利益を保護することを目的に、昭和37年に制定されました。

消費者庁ホームページの下記に対象品目と品目ごとに何を表示する必要があるか掲載されています。
http://www.caa.go.jp/hinpyo/outline/outline_01.html

洗濯表示は2016年12月1日から国際規格に準ずる表示へ変更が必要となり、旧表示が必ずしも対応していないので注意が必要です。
洗濯表示はハンドメイド作家なども「販売」する場合はつける必要があります。

また、原産国表示について、主に景品表示法との関係で説明がありました。
原産国は、「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」のことをいい、その具体的な判定基準は、こちらのサイトが参考になります。
http://www.jafic.org/pdf/20060606.pdf

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最後に、3 デザイン、ブランド名に関する法律 として意匠法、不正競争防止法、商標法について判例を交えながらお話しをいただきました。

下記の特許情報プラットフォームでは特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索が可能です。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

ファッション関連商品でも意匠登録されているものがあるので、講座のなかでは「コート」を例にして意匠権登録の状況をみなさんと一緒にみていくなどしました。

講座の最後の質疑応答の時間には、アゾ染料規制に関連してアンティークボタンを利用するときはどうしたら良いかといったことや、お酒のボトルのデザインと香水のボトルのデザインが酷似しているものについての法律的な解釈についてなど積極的なご質問が相次ぎました。

お足下の悪い中、ご参加いただきましたみなさまありがとうございました。